BTS ARIRANG が残したモヤモヤと圧倒的な数字

BTS『ARIRANG』が残したモヤモヤと圧倒的な数字。なぜここまで評価が割れているのか

2026年3月20日、BTSの5枚目となるフルアルバム『ARIRANG』が出ました。

リリースされてからのチャートの勢いは相変わらず凄まじくて、MelonのTOP100で1位を取ったのはもちろん、ビルボードのHot 100やGlobal 200でも堂々の初登場1位。チャートの上位をBTSの曲がずらっと埋め尽くしている光景を見ると、「やっぱりBTSだな」と思わされます。チャート1位の記録更新も含めて、商業的には大成功と言っていい結果です。

でも、今回のアルバムほど聴いた後の感想が人によってバラバラな作品も珍しい気がします。

音楽メディアのレビューを見ても、80点〜90点の高得点を付けて「BTS史上の最高作」と絶賛するところがある一方で、Pitchforkのように10点満点中5.3点(他のレビューでも5点満点中2.5点とか)という容赦ない低評価を叩きつけるところもあります。Rate Your Music(RYM)やAlbum of the Year(AOTY)みたいな海外の音楽コミュニティサイトを覗くと、BTSのアルバムとしては過去最低レベルのスコアになっていて、かなり荒れている印象を受けました。

なぜ『ARIRANG』はここまで評価が分かれたのか

なぜ『ARIRANG』はここまで評価が分かれたのか

ビルボード1位で400万枚以上売れているのに、なぜここまで評価が極端に分かれてしまったのか。

Release date : 2026 March 20th
Artist : BTS
Agency : big hit music
Distributor : YG PLUS
Number of tracks : 14 songs
Playing time : 41:27
Title song : SWIM

「これまでのBTSっぽくない」と感じた理由

やっぱり一番大きな理由は、「これまでのBTSっぽくない」という違和感なんだと思います。

実は今回のアルバム、タイトルである『ARIRANG』という名前自体、メンバー発案ではなく総括プロデューサーのパン・シヒョク氏からの提案だったそうです。ビハインド映像などでも触れられていましたが、最初このタイトルを聞いたとき、メンバーたちもかなり困惑したのだとか。

Pitchforkのレビューで印象的な一節がありました。

「大企業から届いた誕生日お祝いメールのようだ。肩に背負った重い負担と稼がなければならないお金のせいで、BTSはプレッシャーに耐えきれず崩れ去るしかなかったのだろう。『ARIRANG』はその崩壊の音だ」

かなり毒のある書き方ですが、今回のアルバムの裏側にある「空気感」を鋭く突いている気もします。

曲そのもののクオリティはかなり高い

曲そのもののクオリティはかなり高い

ただ、じゃあアルバムとして聴けないレベルなのかというと、全くそんなことはありません。むしろ一曲一曲のクオリティだけで言えばめちゃくちゃ高いです。

HYBE主導のもと、欧米の有名ポップスを手掛けるソングライターやプロデューサー陣がズラリと参加していて、トラックの質感、ミックス、マスタリングの精度は文句のつけようがありません。タイトル曲だけでなく、収録曲も全体的にかなり良くて、どれをシングルにしても成立しそうな曲が揃っています。

だからこそ世界中で聴かれているし、400万枚という数字にも繋がっているわけです。

ですが、ただ、個人的にはここがちょっと複雑でした。

BTS – SWIM MV

「BTSらしさ」が薄れたと感じる人がいる理由

潤沢な資金力を活かして海外のトッププロデューサーを起用し、誰が聴いても耳心地の良いキャッチーなポップスを作るというのは、メジャーシーンの基本といえば基本です。ただ、それによって「BTSだからこそ作れた音楽なのか?」というオリジナリティの部分が薄れてしまった感じは否めません。

Anthony FantanoやRYMのユーザーたちが口を揃えて「個性の喪失」を指摘しているのは、まさにこの部分だと思います。アルバム全体の英語歌詞の比率がかなり高くなっているのもあって、グローバル市場での聴きやすさは上がった反面、作品としてのエッジやBTS特有の泥臭い主張が見えにくくなってしまったのかなと。

韓国のファンからも厳しい声が出た

韓国国内のファンコミュニティを覗いてみても、評価の分かれ方は結構シビアでした。

特に言われていたのが、「『ARIRANG』という韓国の象徴的な言葉をタイトルに掲げているのに、蓋を開けてみたらほとんど英語詞で韓国的な要素がほとんど感じられない」という点です。K-POPの第一線で世界を引っ張ってきた彼らだからこそ、欧米のポップトレンドに寄せるのではなく、自分たちのアイデンティティを前面に出してほしかったという声が出るのも分かります。

それでも、BTSは変わっていく

ただ、年齢的にもキャリア的にも、彼らがいつまでも過去と同じスタイルに留まれないのも事実です。

例えばタイトル曲の『SWIM』なんかを聴くと、今までのBTSのバキバキなダンス曲とは違って、すごく心地よいグルーヴ感が全面に出ていて、これはこれで新しいアプローチとして面白いなと感じました。他の収録曲では従来の激しいパフォーマンスを意識した「BTSスタイル」の楽曲も残っています。

最初は「ん?」と違和感を持っていたネット上のファンも、何回かアルバムをループして聴いているうちに「聴けば聴くほど味が出るスルメ曲が多い」と受け入れ始めている雰囲気もあります。

結局、『ARIRANG』をどう感じるかは人それぞれ

結局のところ、今回のアルバムは「ポップミュージックとしての圧倒的な完成度」と「アーティストとしてのアイデンティティ」の狭間で揺れた結果なのかな、と個人的には思っています。

完璧なポップアルバムとして素直に楽しむか、BTSというグループのストーリーや個性を求めて落胆するか。見る角度によってまったく違うアルバムに見えるのが、今回の『ARIRANG』の面白くもあり、少し切ないところかもしれません。

また次の記事で。

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